舞蝶〜踊り子と一人の紳士〜/なかがわひろか
憂い顔の蝶が舞う
襖に描かれた青、赤、緑
添い手を離せば
連れて行ってしまわれる
あちら
こちら
ひらり
舞う蝶
停まり葉は枯れ落ち
夜雨(よさめ)に羽根が染まる
紳士:「お嬢さん、こんなところで踊っちゃいけないよ。」
女 :「あらやだ。誰がそんなことお決めになって?」
紳士:「大人が決めたんだ。たくさんの法律を使ってね。」
女 :「アタクシ、難しいお話は嫌いですの。」
紳士:「そもそもこんな夜更けに踊るなんてどうかしていないかい。」
女 :「女はいつも、どうかしているものよ。」
紳士:「おや、これはうまいね。
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