ナベ・トランスレーション/ブルース瀬戸内
 
ホカホカ鍋をつつきましょう。
自分の立ち位置も分からないのに
理論構築に躍起になっても仕方ありません。
ネギが好きなのか、ササミが好きなのか
豆腐なのか、タラなのか、はたまたうどんなのか
その眼差しはどこからどこに注がれているのか。

ホカホカ鍋をつつきましょう。
欲しいのは都合のいい解釈なのか
戦略的でいやらしい謝罪なのか
誤解を利用した自己肯定なのか
ダシだけに頼るような生き様なのか。

ホカホカ鍋をつつきましょう。
立ち込める湯気で真相が隠されたからといって
すべてから開き直ることはできませんが
身体が温まれば
とっくに約束された明日であっても
許そうかという気になります。
そんな、やや情けない甘さを見せるところに
あなたや私の存在意義があるのかもしれません。

そろそろうどんを入れて
少し、加熱しますか。

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