余計な心配。/恭二
 
郵便受けの中は、今朝も空だった。
配達の人が間違えたのかと思って、
隣の郵便受けも、下の郵便受けも覗いた。
どの郵便受けも全部空だった。
僕は配達の人が間違えないように、
211号室 坂本と新しく書き直して
ボンドで貼った。

五日過ぎて、ボンドの臭いがやっと消えても、
郵便受けの中は、やっぱり空だった。
誰かが悪戯をして隠してしまったのかと心配になって、
そこらじゅう探してまわった。
だけど、封筒の切れ端らしいものも、
便せんの切れ端らしいものも、落ちてはいなかった。
僕は余計な心配をしなくていいように、
一番小さくて、一番高価な錠前をお店で選んだ。

また三日過ぎた。
これ以上我慢できなくなってしまって、
もう一度自分の方から手紙を書いた。
あなたに届くのに二日、
あたたが読むのに一日、その日に返事を書いて投函。
僕に返事が届くのに、プラス二日。

待ちに待った五日間。
郵便受けの中は、今朝もやっぱり空だった。
届かない理由を、今日は何としようか。



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