怪獣だけど/九谷夏紀
あたし
火を噴く怪獣なの
ブワーって火を噴くから
みんな逃げる
大袈裟だよ
本気じゃないことわかるでしょう
誰にも危害加えていないし
この火はさみしさで出来ているのに
そうしてまた
しゅんとして
せつなくなるとわたしは
水を流す怪獣になる
じめじめし出すから
またみんなが遠ざかる
みんなを思って流しているだけなんだよ
わたし
こういう性質だから
複雑な構造だと思われがちだけど
ほんとうはものすごく単純で
扱いも簡単なの
頭を撫でていてさえくれれば
じぃっとしてる
気持ちがどこへ片寄ることもなく
一匹のおとなしいただの生き物になる
火なんかほんとは
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