*あしたのかぜのむこうがわ*/かおる
北の大地では薄荷味の風に
モンスター化した凍りついた樹々
海の向こうではこの時期
湯気を上げているはずの換気口が黙りこくり
狂った季節がピンクの花を咲かしている
バラバラの季節を枠組みに嵌めようと
画策している将軍は
突風に攫われて風前の灯
アラーアクバルの囁きが電磁波に乗って聴こえた
勘太郎は狂った羅針盤を抱えて途方に暮れる
気にくわないだけで
その存在自体の証拠隠滅を計る
そんな感情ばかりが大手を振って闊歩し始めると
ニョッと現れたエルニーニョは
気温まで上昇させてしまうのかもしれない
走り抜けていくきみたちの
巻き起こす風はあしたに溶け
置いてきぼりをくうあたしは
感傷の甘さを噛み締め
きょうのかぜに倒れないよう立っている案山子
ただ、風が通り過ぎるのを感じるだけで
むこうがわは夢のまた夢
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