東京パーラー/佐野権太
 
東京と東京のあいだは
やはり
びっしり東京だった
銀色のパチンコ玉で犇(ひしめ)いていて
覗き込めば
ひとつ、ひとつ
歪(ゆが)んだ顔を映す

冷たい光の反射に
じっと身構えていても
なめらかに運ばれてしまう
右と言えば

と言う人がいるので
  

歩行者信号の明滅
車両出口の回転灯
建設断固反対と書かれた文字
の、太さ
ロータリーを流れてゆくバスの行き先を
本当は
知らない

軽喫茶の
硝子の内側には
CROSEDの洒落(しゃれ)た文字が
ぶら下がっている
開けるつもりなど
ないのに

枠に合わない
排水溝の渇いた蓋が
かたん
と鳴いた
きっと
僕の重みで

戻る   Point(31)