東京パーラー/佐野権太
東京と東京のあいだは
やはり
びっしり東京だった
銀色のパチンコ玉で犇(ひしめ)いていて
覗き込めば
ひとつ、ひとつ
歪(ゆが)んだ顔を映す
冷たい光の反射に
じっと身構えていても
なめらかに運ばれてしまう
右と言えば
左
と言う人がいるので
歩行者信号の明滅
車両出口の回転灯
建設断固反対と書かれた文字
の、太さ
ロータリーを流れてゆくバスの行き先を
本当は
知らない
軽喫茶の
硝子の内側には
CROSEDの洒落(しゃれ)た文字が
ぶら下がっている
開けるつもりなど
ないのに
枠に合わない
排水溝の渇いた蓋が
かたん
と鳴いた
きっと
僕の重みで
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