寺嶋さん/
 

ひとり、空を仰いで佇んでいると
菜の花畑が、ざわざわと這いずるように分かれて
モンシロチョウを追い散らしながら、跳び込んで来る
これでもか、っていうくらいの
満面の笑みを担いで
息を切らせ、走って来る


寺嶋さん、今日も郵便、ありがとう。



少女は車椅子の上、微笑みを返しながら手を差し伸べる
大きくて広い、つばの帽子から覗く
虚ろな眼差しの奥
悪戯な春風が舞い上がる
受け取った手紙を抱えたまま、宙に翻った、帽子
寺嶋さん、一目散に走りだして
ナイスキャッチ!



ありがとう、寺嶋さん。


元気良く会釈を叫び、また一目散に走りだす

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