猫の神様/及川三貴
 
透明な針が刻んで
苦しげに 身近な
皮膚が縮んでゆく
冷たい大気がやって来て
窓を揺らしているならば
あなた 目を閉じなさい
物憂げな静けさが
決して積もることなく
降り続ける こんな夜に

 堤防沿いを歩いて
 排水路の影から
 海を見ていた あなた
 夕闇が歩けと急かして
 小石を拾って握りしめた

 どこかを歩いて
 欠伸を海を渡る
 朝達に問いかけているなら

 朽ちた手すりの階段を
 下って 開けた磯辺で
 あなた私の放物線を観てた

帰ろうよ
帰ろうか


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