マテリアル・グランドツアー/カンチェルスキス
がやなあ」娘
「だいぶ汗かいたなあ」おっさん
「ニュース23までには間に合いますよ、お義父さん」
「チクシさんはエラいで」おっさん
「そうですね、お義父さん」
「チクシさん、カツラちゃう?」嫁と娘
「オレはカツラやで」おっさん
「わかってるって」嫁と娘
「そうだったんですか、お義父さん」
「そやねん」
「そやねん」嫁と娘
こんな会話は嘘だ
四次元ポケットからポケットティッシュが出てくるようなものだ
四人は腰のところで腕を大きく振って
おれの横を平和裏に通り過ぎていっただけだった
部屋に戻って
おれは適当にボタンを押して電話した
「おれさ、メイクアップアーティストになりたいんだよ」
って言ったのに
「メイキャップアーティストでしょ」
と訂正してくれる人は誰もいなかった
モノポリー盤の横に冷えたチンジャオロースが
おれは手でつかんで食った
おれの主食だ
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