マテリアル・グランドツアー/カンチェルスキス
「あかん、うちはあかんわ」
おれはおそらく二人とも受けつけない
少なくとも正面からは
裏から回ってくるんなら考えるけど
駐輪所のおっさんは
まるでハンガーにかかってるブルゾンみたいな
幻影だ
それから短パンランニングのおっさんが
急坂を正確な呼吸リズムで難なくのぼっていった
短パン屋で「できるだけ短くして!」って
注文してできあがったような短パンだった
おれは自動販売機の明かりで
手のひらを少し眺める
「あなたは死にません」
駅裏の占い師に言われたことを思い出した
おれはどんどん歩いていった
まるで女のケツの皮がめくれるくらいまで
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