最期の写真家/蒸発王
 
それでも止めないのは
あの一言のおかげだと思っている


『最期の写真家』


気付いたのは
老夫婦の写真を撮った時だった


仲の良い夫婦で
金婚式の記念にと
シャッターを振った
連続して何枚か撮った写真の中に

1枚だけ

十六・七歳の少年と少女が映っていた
心霊写真かと思い
其の写真だけは渡さなかった


それから暫く経って
老夫婦は
事故で亡くなってしまった


葬式にはつい最近
僕が撮ったばかりの写真が並べられた



ますます不気味になって
スタジオの師匠に尋ねると



写真屋には稀に
そういう人間がいるら
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