祈りに関する情景/吉田ぐんじょう
 
彼女を守っている


悲しくなりたいときには
セルフ洗車をすることにしている
五百円でワックスまで掛けてくれるコースで
窓もドアもぴっちり閉めて
ミラーも折りたたんでしまって

待っているとそのうち
モップのお化けみたいなのが
豪雨を降らせながら通過し
車内は夜になってゆく
世界の終わりがきたような感じだ
ハンドルにもたれて嗚咽してみる
豪雨は止まない
少しだけ祈ってみる
おなかがぐうと鳴った
多分まだ
わたしは生きたがっている
そのことが何となく嬉しい

洗車が終わったら
ぴかぴかの車で
何か温かいものでも
食いに行こうと思った

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