祈りに関する情景/吉田ぐんじょう
・
夕暮れの遠くに霞む
四台のクレーン車は
輪を描くように向かい合って
なんだか
太古の昔に滅んだ恐竜の
弔いをしているように見える
・
朝に洗濯物を干す母親は
太陽に両腕を広げて
大きな十字架に
なってしまった
敬虔な気持ちでそれを見つめる
わたしの前に置かれた牛乳は
もう冷めてしまっている
・
深夜のガードレールに寄りかかり
うつむいて
メールを打つ若い女の子は
聖書を読む宣教師のように
背中を曲げている
彼女が巻いているバーバリーは
何かしら神聖なものを思い起こさせるような
きっぱりとした色で
はたはたと風に揺れながら
やわらかに彼女
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