私はネクロフィリア/佐々宝砂
 
そう私はネクロフィリア
でなければ食屍鬼である

屍体がここにある
屍体らしい臭いを発散している
腐り始めている
凝固した血液が唇からはみ出しているが
いまさら傷付けたところでもう血液は
凝固しない流れ出るだけだ
おお流れでるすべての血液を飲み干せ
だが私は吸血鬼ではない

そう私はネクロフィリア
でなければ食屍鬼である

吐露とろした暗い霧ふきだまる
墓場の中央で
ピックマンとそのモデルたちと
おどろにおどる おどるはおどろ
魂魄(こんぱく)この世にとどまりて
違うちがう
魂(こん)はどこか知らない宇宙を彷徨い続け
魄(はく)の方はここにどろりわだかまっているのさ
嘘だと思うなら漢和辞典で
魂と魄をひいてみろってんだ

というわけでとにかく私はネクロフィリア
でなければ食屍鬼である

もっとうまい屍体をよこせ!
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