春・夜・雨/do_pi_can
 
ビルの谷間に
あなたの影が忍び込み始めると,
夜は街を装い
ヘッドライトの灯りが
チラホラ
チラホラ
ワインの赤を
耳元で語るのだ
雨模様の春先の
闇に溶け出した起重機が
密かに企んだ
ベジエ曲線を描く壁面は
天に達する建物の墓碑銘を気取る
その先端にかき回された雨雲の
踊るタンゴの旋律
その足取り
せつない

乳母車を押す男の
毛の無い細い素足にも似た
恍惚のラブロマンス
サックスの官能を反射する
しとど濡れた路面に
跳ね,踊る情動
湿ったピンク色のマフラーは
巨大な風車に
受け止められ
ショーウインドウーに散りばめられ
スイッチの切られる
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