風の歌が聞こえない/渡邊永遠
シャボン玉のように
自由に、ただ自由に
あちらへプカリ
こちらへプカリ、と
風に身を委ねられるような
全てを信じきることの出来る
白い心を抱いていたことがあった
風の優しい歌う声を聞きながら
あれは、確かに私。
いつの頃かは、思い出せない。
少しずつ、時間をかけてだったのか
それとも、気がつきもしないような、急速過ぎる間だったのか
どちらにしても
自分自身の身体の変化には気付けていたが
中身の変化の巧みさに
惑わされてしまっていた
それも、確かに私自身。
同じ風は吹いているのに
どこかで、じっと耳を澄ませて
『風の胸の内』を聴こ
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