眠り姫の目覚め/なかがわひろか
 

置いておきたかったのでしょう

ねえお父様
わたしは本当は知っているの
わたしは本当は
眠ってなんかいなかったのよ

お父様が
わたしが寝ている間にしていたこと
わたしは全て知っているの

お母様の
刺すような視線も
ちゃんと分かっていたの

目覚めても
そこには何の幸せもないことは
とっくの昔に
気づいていたの

でも何一つ恨んでなんかいやしないわ
わたしが女であったこと
お父様は
生涯お忘れにならなかったでしょう

わたしたちは

きっと

きっと

幸せな

父娘だったのでしょうね

もうすぐね

もうすぐよ

会いに行くわ

あなたは

わたしが知った
生涯でただ一人の

男なのですもの

(「眠り姫の目覚め」)
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