スプラウト/朽木 裕
くて色素の薄い目
この目がゆっくり閉じるとき
僕は君の傍に居るのかな
ゆっくりゆっくりと下りるシャッター
スローモーションのおやすみみたいに
じわじわ夜に感光する目前の花火
黒い悪魔に楯突くみたいな赤いひかり
冬に花火、したかったんだ
云いながら君は声にならない声で
「 」
って云った
君は火のついた花火を持ちながら
その手で目をこすって泣いた
抱き締めようと手を伸ばしたら
君は感光した赤を誕生日の蝋燭みたいに
ふっと消して夜に消えた
「 」
一文字だけ変えて君と同じことば
足音と一緒に川辺のコンクリィトに吸い込まれて消えた
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