スプラウト/朽木 裕
りんご飴、ねぇ買って
と君は舌っ足らずに僕の袖をひいた
正月でもなければ夏祭りもない三月の夜空
りんご飴なんて何処で手に入るの
問うと君は平然として
じゃあ花火しよっか
後ろからではなく前から僕の手を引っ張ってどんどん歩く
冬に花火がしたいって そういえばいつも云ってた
僕の車には去年の夏に買った、
冬にするつもりの花火が沢山のせてある
うん、花火、しよっか
まばたきでシャッターをきれたなら
僕は君の写真に埋もれて死ねるだろう きっと
白いかんばせ 長めの栗色ストレート
大きくて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)