花/なかがわひろか
 
風に舞うほのかな匂いは
今もまだ鼻腔に残る
景色は暗くなり
見えないものが光り出す

剣が舞う
盾が割れる
戦士の声
響く

忘れないように泣くでしょう
優しいように泣くでしょう
慈しむように笑うでしょう
泣かないように笑うでしょう

いつかの日還るようにと
願い祈り約束を
優しい赤が染まり出す
光るは我が子

母の声
妻の声
あの子の声
香る

伝わるように叫ぶのでしょう
届くようにと鳴くのでしょう
優しい微笑で泣くでしょう
泣かないように笑うでしょう

忘れないように泣くでしょう
優しいように泣くでしょう
慈しむように笑うでしょう
泣かないように笑うでしょう

(「花」)

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