別れの曲/長谷伸太
 
ひとけの無いがらんとした灰色の
ただ広がっているだけのアスファルト
何故か工事がストップしたままの
どこにも繋がっていない道ではない道

わざわざここまで来たのは
あまり悲しくならないためだったのに
今日はなんという天気なのだろう
少し冷たい風が吹くたびに
桜の花弁が降ってくる

どこの花が散っているのだろう
今日は随分と雲が動く
竹の倒れた音がする
ようやく鶯も上手く鳴くようになり
あぁ雲がまた千切れ・・・

語るのはまだ見ぬ未来でも
通り過ぎた過去でもなく
今あらわれ今消える
今だけの短い話

君の髪に桜の粉の降ったのを何度もはらう
あんまり綺麗で悲しくなる
この白い粉が君を遠くへ連れて行くのだ

こんな調子では
そのうち星まで降ってきそうだから
まだ夕日もあかるいうちに
カラスと一緒に帰ることにしよう

小さな君の足音が
私の心臓に消えない楽譜を刻み付ける
今一つの曲が終わる
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