カイライ/なかがわひろか
拝啓、先生へ
私は今、とても怖いのです
あの頃の私に戻ってしまいそうで
私はとても怖いのです
あの頃の私は
今思えば悲しいくらい
いろいろな物につき動かされて
多くの理不尽な考え方に
人生の大半を喰われてしまいそうになっていたのでした
私を喰い尽くすものとは
なんだったのでしょう
私にはその姿が
終に見えることは
なかったのです
私はは結局何もできることもなく
日々を途方に暮れていたのでした
そんな日々が
またやってくるのでしょうか
抑える術がないのなら
私には何もできることは
ないのでしょうか
悲しいほどに
振り回される
あなたの操り人形として
ただ、ただ、
存在していただけの
私に
戻ってしまうのでしょうか
勝手なお手紙をお許し下さい
おそらくこの手紙も
あなたが書かせたものなのでしょう
追伸、
ここには何も記しません
せめてもの私の抵抗です
どうかお元気で
敬具
(「カイライ」)
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