黒い星座/塔野夏子
 
風は暗がりから吹く
私の影は滴りつづける

誰も居ない
かつて誰かが居たかもしれない
そのわずかな痕跡も
とうの昔に温度を失い

記憶を失い

頭上には黒い星座たち

ただ脳裏には
仄白い寝台が明滅し

私は其処へ帰れるだろうか

心 というものも
其処へ置いたままの気がする

そして今私の内で
心のようにふるまっているもの
その正体を私は知らない

風は暗がりから吹く
私の影は滴りつづける

帰りつけるだろうか

わずかな痕跡をたどって



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