もう一度だけだべてみたいあのホットケーキー/ジム・プリマス
子供の頃
僕の住んでいる街に薄汚い工業都市だったけど
老舗のデパートが一軒だけあって
母に連れられて買い物をした後で
いつも階段の下の小さなフロアーにある
赤い看板のスタンドに立ち寄るのが
慣わしになっていた
四、五人分のカウンターしかなくて
そこにいくといつも母はコーヒーを頼み
僕はいつもホットケーキを頼んだ
ちょこんと座っている僕の前で
蝶ネクタイを締めて腰から下にエプロンをしたマスターは
よく手入れされた真っ黒なフライパンを
大事そうに清潔な布巾で何度も何度もふき取り
そして火にかけたその真っ黒なフライパンに
冷蔵庫から真四角に切ったバターを載せて
菜箸でまあ
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