波間/霜天
所かまわず
一面にのどかな
そんな景色だったので
家と家とに挟まれた
小さいままの公園に出掛ける
左は小さい右は大きい
一列に背比べする鉄棒で
僕は右端お前は一つ下
ぶら下がるだけの僕の隣で
くるくると回り続ける
やっぱりあの頃も散り始めた桜の下で
繰り返す日常の当たり前の一枚だった
くるくると回る友と
交わしたのは秘密だったか誓いだったか
今はお互い忘れただろうが
馬鹿らしくて大切な
そんなことが全てだった
鉄棒を握り 手を離す
掌に鼻を近づけると
記憶の通りの匂いだったので
深いところでは何も変わってないのだと
理由もなく確信した
穏やかにゆっくりと ときに荒波
覆い被さるような波間を
今も遠くも何処かでも
くるくると ぶら下がって
たゆとっていく僕等です
戻る 編 削 Point(6)