おめでとうの仕方/吉田ぐんじょう
 

店長は六年前と同じで
懐かしくて声をかけようとしたが
おでんに夢中の店長は
ただそっけなくいらっしゃいませと言うばかり
癪に障ったので履歴書と一緒に
レモン味のアルコール飲料を購入した
そうして近くのたんぼのあぜ道に座って
それを飲んだ

正月の町は
モノクロのサイレント映画のようだ

俯いて小声で
おめでとう、と練習してみたが
わたしの軽薄なおめでとうは
あっというまに風にさらわれ
鼻先にはレモンのにおいだけが残った
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