R/芳賀梨花子
 
子供の頃からその駅前には大きな百貨店があって、今は再開発かなんかで、まわりの高いビルに埋もれるようになってしまったけれど、私にとってその百貨店は世界で一番すばらしいところだった。百貨店の正面玄関のすぐ横に大きなウインドウがあって、そのウインドウの中には、ぬいぐるみのくまさん家族が暮らしていて、私とお父さんは、ママが紙袋を山ほど抱えて正面玄関から出てくるまで、そのくまさん達を眺めていた。お父さんの手は大きくて、私の手は小さくて、お父さんはいつも私の手を握っているのに、お父さんはいつも私の名前を呼ぶ。大丈夫、ここにいるからと、そのたびお父さんの耳元で言うと、お父さんはにこっと笑った。私のイニシャルはR
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