*家/知風
 
見慣れた色 愛していた白の壁紙に 青インクを滴らせた
それも今は夢

貝の骨 散らばった星の砂 瓶詰めになった船型の心
凪にたゆたう 壊れた女神の半身

朝はこない ガーベラは枯れず 壺は時を湛える
少女の三つ編みの一鎖

ここは沼の底 扉を開ければ とぐろを巻いた肺魚たち
酸素もない オルガンも響かない

   そこから見つめないで
   いっそ捕らえて
   喰われてしまえば
   残るものもなく

アイボリーと黒檀が 交互に窓を通り過ぎる
女王の膝元 砕けた騎士の駒

煌くクリスタルに 飲み込まれていく葡萄酒
やがて一粒の琥珀になった

柱時計が
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