最後にワルツを/蒸発王
 
貴方ともう一度だけ

最後に



ワルツを




『最後にワルツを』


教師生活で
一番長く努めた
其の学校の廃校が決まったのは
年の瀬を過ぎてすぐだった

白い雪が点点とするの森の中
茶色の愛車は完全に景色に溶け
淡零な一月の空は
一寸でも配合を間違えると
直ぐに曇りから雪に変わりそうだ


私がこの学校に赴任したのも
季節の外れたこの時期だった


赴任したての時期は
男の音楽の先生
というものが
山中の子供達には新鮮だったようで
 弱そうだ
などという酷評を頂きながら
子供達の言われるまま
リクエストされた童謡を
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