正孔/ねなぎ
青臭ささと
独特の朽ちた匂いに咽ながら
竹林の脇にあった
枇杷の木に登ろうとして
足を滑らせた時に
竹の葉っぱや
枝の柔らかな土に埋もれそうな
汚い水溜りが
ゆっくりと沸いていた
最初は唯の水が染み出している
だけだと思っていたのだが
思ったよりも深く
側によって手を入れると
肘までは簡単に泥に埋もれた
バランスを崩して膝まで浸かった時に
咄嗟に伸ばした手に引っかかった
竹の根が無かったら
そのまま沈んでいたのかも知れない
ざらざらと滑る竹の根を爪で掻いて
節に指をかけて
起き上がった時には
水溜りは
飛び越せないくらいにはなっていた
不足している
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