手帳に記されていた歌/生田 稔
 
手帳に記されていた歌
批評子


黒き髪妻は鏡を見入るなりわれは灯火に書を見つつ

見上ぐれば肥えた雀が並びけり春の弥生の散歩道

銭湯や男女子供の出入りして湯気の匂いのほのかにするも

話しせず記念写真も購わぬ淋しげな夫婦と道南のたび

右側に俳句ひねるか指数う男テロの飛行場はおおわらわ

赤屋根の散見したる岩内の路をわれらのバスは行くかな

よく晴れた道南の山路話そうと見れば妻い眠なり

小樽来て指四本詰めしタクシーの運ちゃん案内しくれり

裏庭に石油満たす雨降りの宵の弥生の肌寒し

春の花青葉に移り生きゆくも枯れて落ち葉す木々の悲しき

妻ととも春は過ぎ行くひと宵の暖かき部屋明日は如何にか


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手帳に記されていた歌 Copyright 批評子 2007-01-09 14:09:41
 

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