*貞女カーラの裁判*/知風
 
最期を叩き込んだ


状況証拠はがっちりで
拷問せずとも自白もばっちり

だけど死者には語り得ぬ
大きな謎がただひとつ


「被害者Aはなにゆえに
 被疑者Bの元にいたか」

「それは裁判長殿、野暮なご質問
 ひとつの部屋に男と女、というわけで」


されど当のパートリィ
彼は彼女の神殺し

拝石教にとどめをさした
大革命の大指導者

それもし愛の裏返しならば
貞女のあざなの面汚し

騒ぎ出したは世間の女ども
なんせ同じあざなは星の数


貞女カーラの罪名は
己の神をも汚した魔女

有罪判決の三日後の朝
カーラは広場で吊るされた

カーラの墓標に貞女の名無く
貞女を名乗る女も街から消えた

古きはすべて死に絶えて
新しきものだけが残ったかのよう


だけどこうつぶやいたのさ
冷たい心のマーギィ・マァリーは


「男だろうと神だろうと
 女がこの世にひねり出すのさ」


姓を持たぬただひとり
マーギィ・マァリーもまた野薔薇

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