サトリのことは考えちゃいけない/佐々宝砂
私には任務がある、やらなくちゃいけないことがある。
そう、サトリのことは考えちゃいけない。
僕は野球のユニフォーム着て夜の道を歩いている。練習帰り、地下鉄の駅に向かう地下道で、親子連れに出会った。母親とこどもだ。こどもはみっつくらい? こどもの年はよくわからない。目が黄色い。濁っているのじゃない。白目の部分がすきとおったレモン色だ。サトリのことは考えちゃいけない。なんのことだ。「なんのことだって思っただろ」こどもが言う。母親がにたりと笑う。なんだ。いったいなんだ。逃げなくてはいけない気がして僕は走る、いつのまにか僕は枯れ葉模様のスカートを履いている、なぜだ。なぜだ。これ僕のカラダか。違うと
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