兄/士狼(銀)
兄の背中を見ながら
考えた
大きな体を丸めて
窓際の席でひとり頷きながら
形のいい耳に
壊れかけたヘッドフォン
六法全書をいちページ捲る毎に
くるっとマーカーを回す
デスクトップに並んだ四角い授業は
煌々と夜の硝子を照らして
窓に映る兄は
真剣そのものだったから
隙間から溢れる
途切れがちな音を
雨漏りした時みたいな慎重さで
掬ってみた
善意のCは
いつだって無罪だった
ねぇ
あにさん
善意と悪意が目に見えたら
Cは有罪になることもあるのかしら
尋ねようとして
炬燵から顔を出すと
反対側から
隠した悪意がはみ出していた
兄の背中を見ながら
泣いた
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