家族制度(又は宇宙旅行)/吉田ぐんじょう
時だって
不意に
アイネ・クライネ・ナハトムジークが響き渡り
長女が彼氏と電話を始めた
これは長くなりそうだ
長男がため息をつく
☆
着陸するのは火星である
☆
末の妹が泣き止まないので
たまりかねた父親が手を上げる
母親は父親を非難する
長男はそんな二人を軽蔑する
そして早く自立したいと呟く
長女は愛を囁き続けている
アモーレ
アモーレ
アモーレ
ベイビー
とかなんとか
☆
それでも宇宙船は着陸する
どうしようもなく
五人を閉じ込めて
だんだん酸素は無くなってゆく
共存するのは辛い
ただ辛い
アモーレ
☆
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)