家族制度(又は宇宙旅行)/吉田ぐんじょう
 



そろそろ着陸する
と云うので
五人の宇宙飛行士たちは
めいめい
色鉛筆や携帯電話や文庫本やマニキュアなどをしまい
いやいやながらも手をつないで
着陸に備えた

しかしそれは長続きしない
つながった円は
五分もせずに
ばらばらにこわれてしまう



丸い窓から見える地球を
長女が携帯電話で撮影する
長男は眼鏡を外した
泣き出した末の妹を
母親が困ったように抱く
父親は苦々しげに禁煙パイポをくわえる
この一家がとりわけ不仲なわけではなく
知っての通り
家族なんて大体こんなものである
血縁と云うものは
結束バンドみたいに頼りない
何時だ
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