雪の中で私は言葉を失う/未有花
雪の中で私は言葉を失う
ただ無垢の白だけが広がり
心の底から静寂となる
絶えず美しい音楽が
私の耳元にほのかに聞こえ
たゆまない白の乱舞の中で
軽やかな旋律だけを繰り返す
どこか遠い北の果てのおとぎ話が
まるで私を渦巻いているかのように
雪の中でたったひとり
私は耳を澄ましているのだ
その結晶の軋む音を
気の遠くなるような白の旋律を
私はたったひとり聞くために
こうして耳を澄ましているのだ
ただ静寂だけが満ちている
まるで時間(とき)が止まったかのように
雪の中で私は言葉を失う
そして降りしきる音楽に耳を傾ける
戻る 編 削 Point(16)