雪の中で私は言葉を失う/未有花
 
雪の中で私は言葉を失う
ただ無垢の白だけが広がり
心の底から静寂となる

絶えず美しい音楽が
私の耳元にほのかに聞こえ
たゆまない白の乱舞の中で
軽やかな旋律だけを繰り返す

どこか遠い北の果てのおとぎ話が
まるで私を渦巻いているかのように
雪の中でたったひとり
私は耳を澄ましているのだ

その結晶の軋む音を
気の遠くなるような白の旋律を
私はたったひとり聞くために
こうして耳を澄ましているのだ

ただ静寂だけが満ちている
まるで時間(とき)が止まったかのように
雪の中で私は言葉を失う
そして降りしきる音楽に耳を傾ける


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