彼の人へ/なかがわひろか
彼の人に会う日
私は3人の似た人を見た
白いコートの彼の人
今時の服装の彼の人
少し太った彼の人
どれも違う人だったけれど
私は
本当は待ち侘びている自分を
知った
4人目の人が
彼の人だった
変わらず
三つ年の日々を思う
彼の人
遅れて来るのも知っていた
照れ笑いで来るのも知っていた
だから怒らない
怒れない
彼の人
あれからあなたは何人の男を愛し
何人の男に抱かれてきたのだろう
そしてあなたは
どんな声で
啼いていたのだろう
私には知る術はないけれど
彼の人
密やかに
私はただ今でも
思う
あなたを
思う
彼の人
(「彼の人へ」)
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