遠い別れ/銀猫
 
北からの強い風が吹いていた
枯葉をまだ護っている木々にも
誰もいないベンチにも
そこに流れる時間さえ吹き飛ばし
風は強かった

明け方の夢に両の頬が濡れて
世界中で独りぼっちのような目覚めを
不思議と静かに迎えた朝

 (きっと今日はきみが逝った日)

漠然とそんなことを感じた

人生だとか
そんな大げさな物語でなく
けれど
多くの日々を分け合ったきみに
思いを託したことを
ただ愛情と呼ぶには切ない

 (戻らない)

風が吹きつける
すっかり冷たくなったこころにも
まだ風が吹きつける

暦に何の記しもなく
ただ寒いばかりの冬の日
そんな日だったと
いつか人づてに聞いたのだっけ
悲しみと呼ぶには何処か異次元のようで

わたし、
泣けない



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