■批評祭参加作品■七〇年代詩の均質性/岡部淳太郎
集とも言いうるような詩集の登場によって、一篇の詩よりも一冊の詩集としての詩の総合体へと批評の目が向けられた時、現代詩の現実は静かに変容し始めたのだろう。
まず死者が棚を濡らしてすぎていった。
旗のなかで(おそらく蒼白の)
わたくしが把握する、主題。そののち
(おそらく魚らのたぐいの)唇を突出していった。
(稲川方人『償われた者の伝記のために』より)
稲川方人の詩集の多くは、部分引用が困難だ。それは彼の詩集があちこちにばらばらに発表された詩をただ寄せ集めただけのものではなく、それらを再構成し、大胆に加筆修正を行なって一冊の言語空間としての「詩集」という容器の中
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