祭りの炎/結城 森士
 
緑色の少年が白光の中を泣きながら歩いている
彼の、砂利道を隔てた向こう側の意識の中には
水色の少女の後姿があぜ道を逸れて歩いている
そうして彼女はいつも田んぼの水の中へ沈んでしまう
だから彼はいつも白光の中を泣きながら歩いている

白昼には鴉が屋根の上で鳴いていた
夕暮れ、蛙が田んぼで鳴き始める頃
変わって祭りの囃子が聞こえてくる
少年が見上げた空は次第に紅葉に染められ
朱色の帯が夜空に敷かれていくのを眺めながら
掠れた呻き声の様な笛の音色が寂しくて
田んぼの蛙が余計に悲しくなってしまう
だから少年は道端で白い花を摘んでいる

全てを忘れたい人々が枯れた草木に火を灯す
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