コインランドリーの男/オズ
コインランドリーにパンツを忘れた
慌ててとりに戻る
男が一人 イスにすわって雑誌を読んでいる
ほとんど 裸
パンツ一丁だ
それはどう見ても 俺のパンツ
洗いたての 俺のパンツ
「最高だよ」
男がつぶやく
それから数日間 また雨が降り続いて
洗濯物が たまった
俺は再びあのコインランドリーへ行く
そして また あの男だ
俺のパンツをはいて
左足に 黒い靴下
女モノのシャツまで着ている
「最高だよ 雨の日は」
男がつぶやく
それから3年が過ぎ
俺は街を歩く
いつもの交差点で あの男を見た
女モノのシャツ
小麦色のズボン
両足に黒い靴下
幸せそうな 笑みを浮かべている
「最高だ」
男はつぶやく
そう
あの薄暗いコインランドリーに 3年
男が手にした幸せは
小麦色のズボンと
もう片方の黒い靴下
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