虚無をめぐる予測/塔野夏子
身のまわりのひとところが
なんだか前よりも
がらんとあかるくなった気がするのは
そこに虚無がひとつ
生まれていたためだった
私はいまだその大きさも輪郭もつかめず
いつかつかめる日がくるかどうかさえ
おぼつかないのだが
そのまわりを漂っているのは
おそらく枯れた花束だろう
(あの日あの場所に置いた黄色いガーベラの)
その虚無は私に属してはいるが
私の外にあり
内に沁み入ることはないだろう
かといってそれは消えもしないだろうが
いつしかきっと私はそれを携えていることに
違和感をおぼえなくなり
やがてはその存在を
忘れさえするのだろう
忘れた頃にその虚無に
ひそかな虹がかかるのではないか
などと考えてしまう自分を
いまは小さく笑うしかない
メールマガジン「さがな。」92号掲載
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