宵待ち/藤原有絵
 
小さな呼吸で空気を振るわせて
目の前の背中に当たり 返る

真っさらな少女に
闇を吹きかけ
夜を越えた時

昔掛けた
馬鹿馬鹿しい枷が
砕けて熱い塊に変わる

それ一つ
抱きしめて
部屋を抜け出たら

水泡のように儚く
微かな光を受けて
眩く輝く粒子を捕まえよう

愉しそうに
笑みをこぼし

闇を待つ少女

僕は
散歩から
冷たさを集めて

少女に 渡す

生まれ落ちた時のように
熱いものは
頬をつたい
闇を繋ぐ

宵を待つ少女

たおやかに腕を伸ばして
白い指がのど元を撫でたなら

また闇は深くなり
その温度は上がるばかり




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