冬の人/なかがわひろか
 
あれから
何度も同じような冬が過ぎ
薄桃色の春も
常緑の夏も
深紅の秋も

あなたはずっと
喪服の着物姿

世界と隔絶されんばかりの
体を一部とした
景色から飛び出した輪郭のように
ぽっかり浮き出たあなたは

きれい

肩までしかない黒い髪も
着物の歴史をあざ笑うかのようで
ただ

きれい

きっと

次の
春も
夏も
秋も

やがてくる冬も

あなたは

ずっと同じ姿で

きれい

(「冬の人」)

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