彷舌記/木立 悟
燃え上がる舌を晒し
触れるものすべてに火をつけてゆく
光の鎖骨に 首筋に
街と街を結ぶ橋の手足に
遠去かる星
斜めに傾く黒の山から
突き出された光の棘が
天の耳へと向けられている
けだものの声を模した楽器が
何千何万と鳴り響き
取り残されたものたちの息は
次々と歌へと変わってゆく
舌はまだ燃え尽きない
橋から橋へ 炎と煙は
壁のように街を覆う
焼くことのできない緑を舌は巡る
まなじりの裂けたものたちが川に集う
燃え上がる夜に灯る
見えない道を歩み
月に痛む左目のための
流血の国の門へと至り
空へ昇る街を振り返る
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