氷姫/玲瓏
こおりは笑顔を失くしていた。
あなたが消えてから、
見えるものすべて色あせ、
聞こえるものすべて通り過ぎてゆく。
こおりは笑顔を失っても美しく、たくさんのひとが彼女に魅せられた。
しかし、触れようとも、触れようとも、ただ冷たいだけなので、次第にだれも近づかなくなった。
こおりは温かさも失い、固まってうごけなくなった。
それを見兼ねた小鳥は、こおりの肩にとまり呟いた。
「てめぇばかりが不幸と嘆いて、悲劇のヒロイン気取って、迷惑まきちらして自己満足かい?」
「そうなのかもしれない」
「それなら、温泉に行ってみなさい」
「うごけなくて」
「じゃあ、アタイ
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