祝詞、君の/鴫澤初音
 
  君と待ち合わせた路面電車の駅の出口、
  電信柱に凭れて煙草を吸っていた。自分のかいたものを読みながら
  なんてつまらないんだろうって思いながら。

  見上げると乾いた冬の青い空で、水銀灯の高さからもっと上、
  鳥が羽を広げて飛んでいた。眼を瞬く間に鳥は遠くへ飛び、
  残された雲が動いていた。風はまだ少ししか吹いていなくて、
  耳に着けたヘッドホンを落として、君からの着信をとった。

  「ごめん少し遅れる」
  「いいよ 別に」

  こうしたことに慣れた関係が続いて ずっと
  君の眼の下にできた痣や疲れた息が悲しみの雫を落としていく。
  それでもま
[次のページ]
戻る   Point(0)