祝詞、君の/鴫澤初音
君と待ち合わせた路面電車の駅の出口、
電信柱に凭れて煙草を吸っていた。自分のかいたものを読みながら
なんてつまらないんだろうって思いながら。
見上げると乾いた冬の青い空で、水銀灯の高さからもっと上、
鳥が羽を広げて飛んでいた。眼を瞬く間に鳥は遠くへ飛び、
残された雲が動いていた。風はまだ少ししか吹いていなくて、
耳に着けたヘッドホンを落として、君からの着信をとった。
「ごめん少し遅れる」
「いいよ 別に」
こうしたことに慣れた関係が続いて ずっと
君の眼の下にできた痣や疲れた息が悲しみの雫を落としていく。
それでもま
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