泪なく/鴫澤初音
 
 嘘をついた つまらない、つまらない嘘
 嘘をついた瞬間に 津村さんが それに気付いたことに
 気付いていた

 つまらない、どうしてあんなことに 嘘をつくのだろう、唇が
 脳味噌を直結していて 赤く喋ってしまうのだ 
 私は 私が愚かなことを そんなことで消せはしない 嘘は
 再び私を より濃く 愚かに見せるだけであったのに
 
 後悔 なんて いつも いつもしてる 

 津村さんは 私が心から尊敬する、そして心優しい数少ない知合いで
 でも 軽蔑されるに足りる 私が また つまらない

 嘘をつく 恥じる 恥じても 恥じても

 足りなかった 私の 愚かさ 醜さ 消して

 消せ

 繰り返し 繰り返し 訪れる静寂に 耳を傾けて 私は足の爪を 見ていて

 一人
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