靴/アンテ
12 靴
身体が自然に
階段の上から二段目に座った
靴箱にずっと押し込んだままだった
ジョギングシューズ
しっかりと紐を結びなおす
土手をおおう雑草が
ときおり一斉になびく
河原のグラウンドは
ぽっかり穴があいたように静かだ
野球のボールがひとつ
置き去りにされている
家じゅう探して
ようやく見つけだした童話の本
発行日は五年以上も前だ
動けなくなった観覧車の
いちばん上の箱のなかで
消えていった少女の命
を助けたくて
でも
観覧車の叫びはだれにも届かなかった
修理も解体もされず
丘のうえに放置
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